3-1 磁石の研究史

物理学

磁石の研究史

磁石に関する研究もまた、古代から続いてきた。紀元前600年頃、中国では天然の磁鉄鉱(マグネタイト)が鉄を引き寄せる性質が知られており、これは後に羅針盤として利用され、航海術に革命をもたらした。しかし、この磁気の現象の本質は長い間不明瞭であり、単なる経験的な知識にとどまっていた。

1600年、イギリスの科学者W. Gilbertは『デ・マグネテ』を著し、磁気の研究において大きな進展をもたらした。彼は、磁石が持つ性質を科学的に研究し、地球そのものが巨大な磁石であると提唱した。彼の研究は、磁気を体系的に理解するための第一歩となったが、磁場の源についての完全な理解には至らなかった。

そして、19世紀に入ると、磁場研究において重要な転換点が訪れる。1820年、デンマークの物理学者H. Oersted(エルステッド)が、電流が磁場を生じることを発見したのである。この発見は、磁場の理解において画期的なものであり、それまでの磁石に基づく磁気研究を一変させた。Oerstedの実験では、電流が流れる導線の近くに置いたコンパスの針が動くことが確認され、電流が磁場を生成することが初めて明らかになったのである。

この発見は、磁場の源が単に磁石だけでなく、電流によっても生じることを示しており、電磁気学の誕生を意味するものである。ここで重要なのは、磁場を理解するためには、まず電流の性質を理解する必要があるということである。磁場は電流によって生成されるため、電流に関する知識がなければ、磁場を正しく説明することはできない。

続いて、A. Ampèreは、この電流と磁場の関係を数式で表し、Ampèreの法則を提唱した。この法則は、電流が磁場を生み出し、その磁場が他の電流に力を及ぼすことを定量的に示している。この研究は、電磁気学の基礎を築き、後にMaxwellによる電磁気理論の統一へとつながる重要なステップとなった。

そこで、このようにして発展してきた磁場の研究を学ぶために、まずは次の記事から定常電流に関する理論を整理することにする。定常電流とは、時間とともに変化しない一定の電流であり、この電流が作り出す磁場の特性を理解することが、磁場そのものをより深く学ぶための基礎となるのである。

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