5-4 電磁場のエネルギーと運動量

物理学

電磁場のエネルギーと運動量

Maxwell方程式

\begin{align}
&\nabla\cdot\bm{D}(\bm{x},t) =\rho_\mathrm{e}(\bm{x}),\label{eq: maxwell1_inChapMaxwell}\\
&\nabla\times\bm{E}(\bm{x},t)+\del{\bm{B}(\bm{x},t)}{t} =\bm{0},\label{eq: maxwell2_inChapMaxwell}\\
&\nabla\cdot\bm{B}(\bm{x},t)=0,\label{eq: maxwell3_inChapMaxwell}\\
&\nabla \times \bm{H}(\bm{x}, t)-\del{\bm{D}(\bm{x},t)}{t}=\bm{i}_\mathrm{e}(\bm x, t).\label{eq: maxwell4_inChapMaxwell}
\end{align}

本記事では、Maxwell方程式をもとに電磁場のエネルギーと運動量について考える。

電磁場のエネルギー

電磁場のエネルギー保存がどのように記述されるかを調べる。ここでは、点電荷系と電磁場が存在する系を考える。このとき、自己場による自己力も含んだ点電荷の運動方程式は、
\begin{align}
m_i\ddif{\bm{r}_i(t)}{t}=\int_V\dd^3x\left(q_i\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t))\bm{E}(\bm{x},t)+q_i\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t))\dot{\bm{r}}_i(t)\times\bm{B}(\bm{x},t)\right) \end{align} と書ける。

補足

自己場を含まないと、あとの式変形でMaxwell方程式を適用する際に自分自身を除く必要が生じるために異なる結果となる。

この両辺に速度ベクトル$\bm{v}_i(t)=\dd \bm{r}_i(t)/\dd t$との内積をとって$i$について和をとると、第2項が直交するために消えて、 \begin{align} &\sum_im_i\bm{v}_i(t)\cdot\dif{\bm{v}_i(t)}{t}=\sum_i\int_V\dd^3x\left(q_i\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t))\bm{v}_i(t)\cdot\bm{E}(\bm{x},t)\right) \end{align} を得る。 ここで、$\sum_iq_i\bm{v}_i(t)\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t))$は点電荷系がつくる電流密度であるため、Maxwell方程式の式\eqref{eq: maxwell4_inChapMaxwell}より、 \begin{align} \sum_iq_i\bm{v}_i(t)\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t)):=\bm{i}_\mathrm{e}(\bm{x},t)=\rot \bm{H}(\bm{x}, t)-\del{\bm{D}(\bm{x},t)}{t}
\end{align}
と書ける。よって、運動方程式は、
\begin{align}
\sum_i\dif{}{t}\left(\frac{1}{2}m_i\bm{v}_i^2(t)\right)&=\int_V\dd^3x\left(\rot \bm{H}(\bm{x}, t)-\del{\bm{D}(\bm{x},t)}{t}\right)\cdot\bm{E}(\bm{x},t)\nonumber\\
&=\int_V\dd^3x\left(\bm{E}(\bm{x},t)\cdot\rot \bm{H}(\bm{x}, t)-\del{\bm{D}(\bm{x},t)}{t}\cdot\bm{E}(\bm{x},t)\right)\nonumber\\
&=\int_V\dd^3x\left(-\frac{1}{2}\del{}{t}\left(\bm{E}\cdot\bm{D}+\bm{B}\cdot\bm{H}\right)-\bm{H}\cdot\rot\bm{E}+\bm{E}\cdot\rot\bm{H}\right)
\end{align}
まで変形できる。ただし、最後の式変形では、
\begin{align}
\frac{1}{2}\del{}{t}\left(\bm{E}\cdot\bm{D}+\bm{B}\cdot\bm{H}\right)=\bm{E}\cdot\del{\bm{D}}{t}+\bm{H}\cdot\del{\bm{B}}{t}
\end{align}
より、Maxwell方程式の式\eqref{eq: maxwell2_inChapMaxwell}から、$\partial\bm{B}/\partial t=\rot\bm{E}$を用いた。

ベクトル恒等式:
\begin{align}
\divergence\left(\bm{E}\times\bm{H}\right)=\bm{H}\cdot\rot\bm{E}-\bm{E}\cdot\rot\bm{H}\label{eq: vec_div_ExH}
\end{align}
を用いると、最終的に運動方程式は次の形まで変形できる。
\begin{align}
\dif{}{t}\left[\sum_i\dif{}{t}\left(\frac{1}{2}m_i\bm{v}_i^2(t)\right)+\frac{1}{2}\int_V\dd^3x\left(\bm{E}\cdot\bm{D}+\bm{B}\cdot\bm{H}\right)\right]=-\int_V\divergence\left(\bm{E}\times\bm{H}\right)\dd^3x.
\end{align}

この式を、物理学ではエネルギー保存の式であると解釈する。まず、いま考えていたのは点電荷系と電磁場からなる系であったが、それらを分離することに成功している。左辺の第1項は全点電荷系の運動エネルギーを表している。古典力学の範疇なら、運動エネルギーの時間変化はなす仕事の量に等しいはずである。しかし、いま考えている電磁気学においては、2つの電磁場に関係する項が存在する。まず、左辺の時間微分を含むものは電磁場のもつエネルギーであると解釈できる。そして右辺は、Gaussの定理を用いると領域$V$の表面$S$における面積分に変わり、
\begin{align}
-\int_V\divergence\left(\bm{E}\times\bm{H}\right)\dd^3x=-\int_S \bm{S}\cdot\bm{n}\dd S
\end{align}
となる。これは電磁場に関するベクトル量である$\bm{S}$が、領域$V$から湧き出す(抜け出ていく)量を表す。この物理量$\bm{S}$をPoyntingベクトルという。このPoyntingベクトルなる量が、表面$S$の法線ベクトル成分の値をもつとエネルギーの流れが存在することになり、全エネルギーが減少することを意味する。

以上の結果をまとめると、電磁場のエネルギー$U_\mathrm{em}$とPoyntingベクトル$\bm{S}$の表式は次のように得られた。

電磁場のエネルギー$U_\mathrm{em}$とPoyntingベクトル$\bm{S}$

\begin{align}
U_\mathrm{em}(t)&:=\frac{1}{2}\int_V\dd^3x\left(\bm{E}(\bm{x},t)\cdot\bm{D}(\bm{x},t)+\bm{B}(\bm{x},t)\cdot\bm{H}(\bm{x},t)\right)\label{eq: def_Uem_energy}\\
\bm{S}(\bm{x},t)&:=\bm{E}(\bm{x},t)\times\bm{H}(\bm{x},t)=\frac{1}{\mu_0}\bm{E}(\bm{x},t)\times\bm{B}(\bm{x},t)\label{eq: def_S_Poynting}
\end{align}

電磁場の運動量

再び、点電荷系と電磁場が存在する系を考える。このとき、自己力も含んだ点電荷の運動方程式は、
\begin{align}
m_i\ddif{\bm{r}_i(t)}{t}=\int_V\dd^3x\left(q_i\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t))\bm{E}(\bm{x},t)+q_i\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t))\dot{\bm{r}}_i(t)\times\bm{B}(\bm{x},t)\right) \end{align} であった。今回は、そのまま$i$について和をとると、

\begin{align}
\sum_im_i\dif{\bm{v}_i(t)}{t}&=\sum_i\int_V\dd^3x\left(q_i\delta^{(3)}(\bm{x}-\bm{r}_i(t))\left\{\bm{E}(\bm{x},t)+\dot{\bm{r}}_i(t)\times\bm{B}(\bm{x},t)\right\}\right)\nonumber\\
&=\sum_i\int_V\dd^3x\left(\bm{E}(\bm{x},t)\divergence\bm{D}(\bm{x},t)+\left(\rot \bm{H}(\bm{x}, t)-\del{\bm{D}(\bm{x},t)}{t}\right)\times\bm{B}(\bm{x},t)\right)
\end{align}

とできる。 また、

\begin{align} \del{}{t}\left(\bm{D}\times\bm{B}\right)=\del{\bm{D}}{t}\times\bm{B}+\bm{D}\times\del{\bm{B}}{t}=\del{\bm{D}}{t}\times\bm{B}-\bm{D}\times\rot\bm{E} \end{align}

より、

\begin{align} &\dif{}{t}\left(\bm{G}\mathrm{m}(t)+\frac{1}{c^2}\int_V\dd^3x\bm{S}(\bm{x},t)\right)\nonumber\\
&\quad=\int_V\dd^3x\left(\bm{E}(\bm{x},t)\divergence\bm{D}(\bm{x},t)-\bm{D}(\bm{x},t)\times\rot\bm{E}(\bm{x},t)-\bm{B}(\bm{x},t)\times\rot\bm{H}(\bm{x},t)\right)\label{eq: em_field_mom_eq1}
\end{align}
まで変形できる。ただし、全点電荷系の運動量$\bm{G}_\mathrm{m}:=\sum_im_i\bm{v}_i(t)$を用いた。 運動方程式を変形して得られたこの式は、左辺の運動量の時間変化は、右辺の力に等しいと解釈できる。左辺の第2項は、電磁場のエネルギーの流れを表すPoyntingベクトルが現れている。つまり、 \begin{align} \bm{G}_\mathrm{f}:=\frac{1}{c^2}\int_V\dd^3x\bm{S}(\bm{x},t)
\end{align}
は電磁場のもつ運動量であると解釈できる。

したがって、右辺は力であると解釈できるはずであるが、このままでは見通しが悪い。そこで、次の量を考える。

$i,j=x,y,z$として、
\begin{align}
T^e_{ij}(\bm{x},t)&:=\varepsilon_0\left(E_i(\bm{x},t)E_j(\bm{x},t)-\frac{1}{2}\delta_{ij}\bm{E}^2(\bm{x},t)\right),\\
T^m_{ij}(\bm{x},t)&:=\frac{1}{\mu_0}\left(B_i(\bm{x},t)B_j(\bm{x},t)-\frac{1}{2}\delta_{ij}\bm{B}^2(\bm{x},t)\right)
\end{align}
とする。これは、行列で書くと、
\begin{align}
(T^e)=
\left(\begin{array}{ccc}
T^e_{xx} & T^e_{xy} & T^e_{xz} \\
T^e_{yx} & T^e_{yy} & T^e_{yz} \\
T^e_{zx} & T^e_{zy} & T^e_{zz} \\
\end{array}\right)
=\varepsilon_0
\left(\begin{array}{ccc}
E_x^2-\frac{1}{2}\bm{E}^2 & E_xE_y & E_xE_z \\
E_yE_x & E_y^2-\frac{1}{2}\bm{E}^2 & E_yE_z \\
E_zE_x & E_zE_y & E_x^2-\frac{1}{2}\bm{E}^2 \\
\end{array}\right)
\end{align}
と表せる。
これらをまとめて、
\begin{align}
T_{ij}(\bm{x},t):=T^e_{ij}(\bm{x},t)+T^m_{ij}(\bm{x},t)\label{eq: Maxwell_stress_tensor_def}
\end{align}
という量を考える。
すると、次で定義される$\divergence \bm{T}^\mathrm{e}$は、
\begin{align}
\left(\divergence \bm{T}^\mathrm{e}\right)x&:=\sum_i \del{T^\mathrm{e}_{ix}}{x_i}=\frac{1}{2}\varepsilon_0\del{}{x}\left(E_x^2-E_y^2-E_z^2\right)+\del{}{y}(E_yE_x)+\varepsilon_0\del{}{z}(E_zE_x)\nonumber\\
&=\varepsilon_0\left(\del{E_x}{x}+\del{E_y}{y}+\del{E_z}{z}\right)E_x-\varepsilon_0\left(\del{E_y}{x}-\del{E_x}{y}\right)+\varepsilon_0E_z\left(\del{E_x}{z}-\del{E_z}{x}\right)\nonumber\\
&=\varepsilon_0E_x\divergence\bm{E}-\varepsilon_0(\bm{E}\times\rot\bm{E})_x
\end{align}
と計算できる。磁場についても同様であるから、
\begin{align}
\divergence\bm{T}^\mathrm{e}&=\varepsilon_0(\bm{E}\divergence\bm{E}-\bm{E}\times\rot\bm{E})\\
\divergence\bm{T}^\mathrm{m}&=\frac{1}{\mu_0}(\bm{B}\divergence\bm{B}-\bm{B}\times\rot\bm{B})\nonumber\\
&=-\frac{1}{\mu_0}\bm{B}\times\rot\bm{B}
\end{align}
最後の式変形では、$\divergence\bm{B}(\bm{x},t)=0$を用いた。

よって、
\begin{align}
\divergence\bm{T}&=\varepsilon_0(\bm{E}\divergence\bm{E}-\bm{E}\times\rot\bm{E})-\frac{1}{\mu_0}\bm{B}\times\rot\bm{B}\nonumber\\
&=\bm{E}\divergence\bm{D}-\bm{D}\times\rot\bm{E}-\bm{B}\times\rot\bm{H}
\end{align}
となる。式\eqref{eq: em_field_mom_eq1}は$\divergence\bm{T}$を用いて、
\begin{align}
\dif{}{t}\left(\bm{G}_\mathrm{m}(t)+\bm{G}_\mathrm{f}(t)\right)=\int_V\dd^3x\, \divergence\bm{T}(\bm{x},t)=\int_S\bm{T}(\bm{x},t)\cdot\bm{n}(\bm{x})\dd S
\end{align}
と書ける。ここでも、Gaussの定理を適用した。

つまり、点電荷系と電磁場の全運動量は左辺の$\bm{G}_\mathrm{m}(t)+\bm{G}_\mathrm{f}(t)$であり、この時間変化は閉曲面$S$にかかる力$\int_S\bm{T}(\bm{x},t)\cdot\bm{n}(\bm{x})\dd S$に等しいということである。この意味で、$\bm{T}$は閉曲面$S$に対して外部から与えられる電磁的な応力とみなせるため、Maxwellの応力という。このことから、式\eqref{eq: Maxwell_stress_tensor_def}は、Maxwellの応力テンソルと呼ばれる2階テンソルである。

電磁場のエネルギー再考

これまでの議論で、電磁場のエネルギーと運動量についての重要事項は述べた。ここからは、もう少し異なる視点から電磁場のエネルギーを考察してみる。

まず、上の議論では点電荷系と電磁場からなる系を考えた。ここでは、電磁場だけの系を考えてみる。
Maxwell方程式から出発し、$\bm{E}$と式\eqref{eq: maxwell4_inChapMaxwell}の内積および$\bm{H}$と式\eqref{eq: maxwell2_inChapMaxwell}の内積を計算すると、
\begin{align}
&\bm{E}(\bm{x},t)\cdot\left(\rot \bm{H}(\bm{x}, t)-\del{\bm{D}(\bm{x},t)}{t}\right)=\bm{E}(\bm{x},t)\cdot\bm{i}_\mathrm{e},\\
&\bm{H}(\bm{x},t)\cdot\left(\rot\bm{E}(\bm{x},t)+\del{\bm{B}(\bm{x},t)}{t}\right)=0 \end{align}

となる。この2式の差分をとると、

\begin{align} -\bm{E}\cdot\del{\bm{D}}{t}-\bm{H}\cdot\del{\bm{B}}{t}+\bm{E}\cdot\rot \bm{H}-\bm{H}\cdot\rot \bm{E}=\bm{E}\cdot\bm{i}_\mathrm{e}
\end{align}
となる。ここで、式\eqref{eq: vec_div_ExH}でも用いたベクトル恒等式: $\divergence\left(\bm{E}\times\bm{H}\right)=\bm{H}\cdot\rot\bm{E}-\bm{E}\cdot\rot\bm{H}$により、
\begin{align}
-\del{}{t}\left(\frac{1}{2}\bm{D}\cdot\bm{E}+\frac{1}{2}\bm{H}\cdot\bm{B}\right)=\bm{E}\cdot\bm{i}_\mathrm{e}+\divergence(\bm{E}\times\bm{H}) \end{align}

と書ける。左辺は式\eqref{eq: def_Uem_energy}で導入された電磁場のエネルギーである。また、右辺の$\bm{E}\times\bm{H}$は式\eqref{eq: def_S_Poynting}で導入されたPoyntingベクトルである。つまり、

\begin{align} -\del{}{t}U_\mathrm{em}(t)=\bm{E}(\bm{x},t)\cdot\bm{i}_\mathrm{e}(\bm{x},t)+\divergence \bm{S}(\bm{x},t) \end{align}

となる。右辺の残りの$\bm{E}(\bm{x},t)\cdot\bm{i}_\mathrm{e}(\bm{x},t)$は、ジュール熱である。電磁場のエネルギーの時間変化は、エネルギーの流出量を表すPoyntingベクトルの発散と、ジュール熱による熱エネルギーの放出によって表現される。

静電場と静磁場のエネルギー

静電場のエネルギーについては、式点電荷を運ぶ仕事量から導出することができていた。電場を用いて次のように書けるのだった。
\begin{align}
U_\mathrm{e}=\frac{\varepsilon_0}{2}\int \dd^3x\, \bm{E}^2(\bm{x})
\end{align}

時間に依存する電磁場のエネルギーは、式\eqref{eq: def_Uem_energy}より、
\begin{align}
U_\mathrm{em}(t)&:=\frac{1}{2}\int_V\dd^3x\left(\bm{E}(\bm{x},t)\cdot\bm{D}(\bm{x},t)+\bm{B}(\bm{x},t)\cdot\bm{H}(\bm{x},t)\right)\nonumber\\
&=\frac{\varepsilon_0}{2}\int \dd^3x\, \bm{E}^2(\bm{x},t)+\frac{\mu_0}{2}\int \dd^3x\, \bm{H}^2(\bm{x},t)
\end{align}
と書けた。
第1項目については、静電場のエネルギーをそのまま拡張した形になっており、電場のエネルギーとみなせるはずである。すると、磁場のエネルギーは2項目となり、やはり静磁場のエネルギーについても、
\begin{align}
U_\mathrm{m}=\frac{\mu_0}{2}\int \dd^3x\, \bm{H}^2(\bm{x})
\end{align}
が成り立ちそうである。これは、電場と磁場の対称性から考えても、成り立っていてほしい関係式である。ただし、磁場のときは、磁荷がないために静電場のエネルギーを求めたときに用いた電荷を運んでくる手法は使えない。そこで、ソレノイド中の一様磁場を用いて、コイルに蓄えられるエネルギーを求めることによって、上の等式が成り立つことを以下に示す。
コイルの単位長さあたりの巻き数が$n$のソレノイドを考える。このソレノイドは、長さが$\ell$であり、その断面積は$S$とし、コイルに流す電流を$I$とする。ソレノイドの磁場については、すでに計算済みであり、
\begin{align}
B=\mu_0nI,\ \ \ \Phi=\int_S \bm{B}\cdot \bm{n}\dd S=BSn\ell
\end{align}
である。この関係式を逆に利用すると、一様磁場$B$をソレノイドに印加したときに生じる起電力を電流$I$の時間変化によって次のように表せる。
\begin{align}
\phi^\mathrm{em}=-\dif{\Phi}{t}=-\mu_0n^2S\ell \dif{I}{t}.
\end{align}
したがって、このときの消費電力は、
\begin{align}
W&=\int(-\phi^\mathrm{em})I\dd t=\mu_0n^2S\ell\int I\dif{I}{t}\dd t\nonumber\\
&=\frac{1}{2}\mu_0S\ell n^2I^2=\frac{B^2}{2\mu_0}S\ell = \frac{1}{2}\mu_0H^2S\ell =\frac{\mu_0}{2}\int \dd^3x\, \bm{H}^2(\bm{x})
\end{align}
と書ける。これは、一様磁場によってコイルに蓄えられたエネルギーと解釈できるが、これを磁場が持っているエネルギーと解釈すれば、
\begin{align}
U_\mathrm{m}=\frac{\mu_0}{2}\int \dd^3x\, \bm{H}^2(\bm{x})
\end{align}
が得られたと言える。

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