このページで解説するNote(抜粋):
https://okunotes.com/contents/Electromagnetism/mksa_system.pdf
電磁気学についてまとめたNoteの最新版:
https://okunotes.com/contents/Electromagnetism/Electromagnetism.pdf
ここでは、先にこのノートで用いる単位系について断っておく。電磁気学においては特に重要であり、単位系が異なると式の見た目が異なるため混乱する原因となるのである。実際に前回紹介したMaxwell方程式や、高校物理でも扱うCoulomb(クーロン)の法則などをとっても、他の教科書やサイトと比較すると若干見た目が異なる可能性がある。
MKSA有理単位系
このノートではMKSA有理単位系を採用するが、まずはMKSA単位系から説明する。
MKSA単位系
MKSA単位系は、電磁気学を論じる上で必要となる次の基本的な量の単位を定めている。
- 長さ [m] (メートル)
- 質量 [kg] (キログラム)
- 時間 [s] (秒、セカンド)
- アンペア [A] (アンペア)
それぞれの単位の頭文字をとってMKSA単位系である。
ここには、電荷の単位 [C] (クーロン)が含まれないが、上の単位を用いて$1$ C$:=1$ A$\cdot$sによって与えられる。
物理の世界でも広く用いられる最も標準的な単位系として国際単位系(SI)が定められている。SIでは、一般に、物理量は次の7つの基本単位で構成される。
- 長さ [m] (メートル)
- 質量 [kg] (キログラム)
- 時間 [s] (秒、セカンド)
- アンペア [A] (アンペア)
- 熱力学温度 [K] (ケルビン)
- 物質量 [mol] (モル)
- 光度 [cd] (カンデラ)
前半4つに着目すると、MKSA単位系と共通していることが分かる。すなわち、MKSA単位系は、SIのうち電磁気学に関係するものだけ抜粋したものといえる。ここまでは受け入れやすいだろう。
MKSA有理単位系
次に、これを少し改良したMKSA有理単位系について説明する。これは、Maxwell方程式などの電磁気学に現れる基本的な方程式系を簡潔にする目的で導入される。
具体的には$4\pi$の係数をどこにおくかが問題となる。Coulombの法則については近いうちに具体的な説明をするが、電荷$q$と$Q$をもつ2つの点電荷が距離$r$離れて存在するとき、それらの電荷間にはたらくCoulomb力は、MKSA有理単位系では次のように表す。
$$
\begin{align}
F_\mathrm{C} = \frac{1}{4\pi \varepsilon_0}\frac{qQ}{r^2}
\end{align}
$$
ここで、$1/(4\pi \varepsilon_0)$は定数であるから、重要なのは$F_\mathrm{C}\propto\frac{qQ}{r^2}$ということである。これは実験事実なので、単純に考えれば適当な係数$k$を用いて、$F_\mathrm{C}=k \frac{qQ}{r^2}$とすれば十分である。実際、高校物理ではこの形で教わるかもしれない。しかし、このまま議論を進めていくと、より本質的に電磁気学を表現できるMaxwell方程式に辿り着いたときに空間が3次元であることを反映して$4\pi$という因子があちこちに現れる。これが現れないようにしたのがMKSA有理単位系である。ちなみに、有理というのは、無理数である$\pi$を消したからそのように名付けられている。MKSA有理単位系の副作用として、最初に登場する最もシンプルな電磁気学法則であるCoulombの法則に$4\pi$の因子が追加されてしまう。
その他の単位系
ちなみに、他にCGSガウス単位系、ローレンツヘヴィサイド単位系など様々な種類のものがある。これは単に基準の違いであって、何を基準にしても相対関係が変わらなければ物理現象を説明する上で矛盾は生じない。多様な単位系が乱立するのは、先述の通り、電磁気学の応用範囲が広いことにも一因があり、自分たちが最も利用する方程式を簡潔にするように、余計な係数を他に押し付けているのである。どの単位系を採用するのかは、それぞれの教科書の著者の裁量である。
まとめ
MKSA有理単位系では、SIと共通するm, kg, s, Aの4つを基本単位とし、さらにMaxwell方程式に$4\pi$の係数が現れないように「有理化」して改良した単位系である。
なるべくシンプルな方程式から実験結果を説明できるのが物理学における理想という考えから、筆者は電磁気学の基本方程式であるMaxwell方程式が美しくなるMKSA有理単位系を採用している。
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